勝ち残る大学の優先すべき「投資」とは?
将来に勝ち残る大学が優先すべき投資とは〜「まだ大丈夫」の過信を捨て、ステークホルダーを“財産化”する経営へ〜
「2035年の崖」と文部科学省が突きつけた最後通牒
「少子化とはいえ、本学は首都圏にあるし、まだ一定の志願者が集まっているから大丈夫だろう」「正直財務的には10年は大丈夫だし」 もし学内のどこかにそのような空気が漂っているとしたら、それは極めて危険な兆候かもしれません。
文部科学省が示した「2040年を見据えた高等教育改革の方向性」や政府の「骨太の方針2026」は、日本の私立大学経営に対して事実上の“最後通牒”を突きつけています。18歳人口は現在の約110万人から2040年には約74万人へと約3割減少し、大学進学者数も約63万人から約46万人へと縮小を予測しています。
特に2035年から2040年にかけては、学生納付金収入が年率6.2%で減少し続ける「入学者急減期(2035年の崖)」が到来します。文科省の試算によれば、対策を講じない場合、2040年度には全国の私立大学601校のうち、実に260校以上が「資金ショートリスクが高い(または特に高い)」状態に陥ると予測されています。
さらに見過ごせないのが、政策誘導による「アメとムチ」の徹底です。 2040年の労働市場では、AIの普及等により「事務職が437万人余剰」となる一方、「AI・ロボット等利活用人材は339万人不足」「大卒・院卒の理系人材は124万人不足」するという深刻なミスマッチが推計されています。
これを受け、文科省は大都市圏の私立大学に対して「人文・社会科学系学部のダウンサイジング(定員縮小)」と「理工・デジタル分野への転換、文理併修による質の向上」を強く求めています。
その本気度は私学助成の配分ルールに明確に表れています。定員未充足の大学(▲171億円)や、ST比(学生教員比率)が高い=大教室でのマスプロ教育に頼る大学(▲277億円)には厳しい減額措置(ムチ)を科す一方、理工・デジタル化や「知的修羅場」と呼ばれる密度の高い教育環境へ転換する大学には、1,000億円規模の「成長分野転換基金」や重点配分(アメ)を投じる方針へと完全に舵を切りました。
つまり、「文系学部で大量に18歳を集め、大教室講義で上げた学費収入で大学を回す」という戦後の私大黄金モデルは、制度的にも市場的にも完全に終焉を迎えるとの見方が浸透し始めています。
関東の有力私大といえども、各層のポジションに応じた教学改革(AI・データサイエンスの必修化、ST比の改善、実学・専門職化など)を進めなければ、あっという間に志願者と補助金の双方を失う時代に入りました。

なぜ名門企業は衰退したのか?「現在のブランド」への過信という罠
しかし、教学の改革(学部の再編やカリキュラムの刷新)には多額の先行投資が必要です。一方で、定員を適正化(縮小)し、ST比を下げるということは、これまで頼みの綱であった「18歳からの学費収入」が確実に減少することを意味します。
ここで大学経営陣が直面する最大の問いが、「学費に代わる新たな収益基盤をどう作るか、そのために今、何に優先投資すべきか」ということです。
この問題を考える上で、一般のビジネス社会における日本の事例が非常に重要な示唆を与えてくれます。 たとえば、かつて日本の消費文化の象徴であり、圧倒的なブランド力を誇った「老舗百貨店業界」や、一世を風靡した外食チェーン「いきなり!ステーキ」の事例です。
かつて日本の百貨店は、「立地が良く、暖簾(ブランド)があれば、お客様は黙っていても毎年やってくる」という成功体験の中にありました。
今儲かっている現在のブランド力と「まだ大丈夫」という危機意識の欠如から、顧客一人ひとりのデータを統合して日常的に繋がり続けるデジタルインフラ(CRM)への投資や、店舗外で収益を上げる仕組みづくりを先送りし、従来通りの「ハコモノ(店舗改装)と待ちの商売」に固執しました。
その結果、人口動態の変化とECの台頭が起きた際、かつての優良顧客との接点を失い、地方店のみならず都心の店舗までもが次々と閉鎖に追い込まれました。
また、「いきなり!ステーキ」は、独自の「肉マイレージカード」によって熱狂的なファン(リピーター)を獲得して急成長しながらも、短期的な店舗拡大(量の拡大)を急ぐあまり、コアなファンが何を求めているかという対話を怠りました。
企業都合による突然のマイレージ規約の改悪や、顧客目線を欠いた店舗運営によってファンは「裏切られた」と感じて一斉に離れ、深刻な経営危機へと陥りました。
この2つの事例は、現在の大学市場に驚くほど重なります。 「伝統とブランドがあるから、18歳の受験生は毎年集まるはずだ(百貨店型の過信)」 「卒業生や保護者には、普段は年数回の学報を送り、周年事業やお金が足りない時だけ突然『寄付のお願い(振込用紙)』を送りつける(いきなり!ステーキ型の独善的アプローチ)」
これまで多くの大学が投資してきたのは、立派な新校舎やキャンパスといった「有形資産(ハコモノ)」中心でした。しかし、本当に優先すべきだったのは、自校を取り巻くステークホルダー(卒業生、保護者、地域・連携企業、社会人学習者)との信頼関係を構築し、継続的に価値を交換し合える「ステークホルダーの財産化(無形資産・ネットワークインフラ)」への投資だったのです。

勝ち残る大学が最優先すべき「3大外部収益エンジン」とネットワーク化
2030年までの「第1期・規模適正化期間」において、将来に勝ち残る大学が最優先で取り組むべき投資は明確です。 それは、国の基金等を活用して「文理融合・AX(AIトランスフォーメーション)教育」へと本業の商品価値をアップデートしつつ、学費依存から脱却するための「3つの外部収益エンジン」を構築することです。
1.寄付金(ファンドレイジング)の恒常的獲得
単発の周年寄付ではなく、卒業生や保護者、篤志家から継続的に支援が集まる仕組み。
2.産学連携・契約型研究費の獲得
企業のR&Dや人材育成ニーズと大学のシーズを結びつけ、共同研究費やスポンサーシップを獲得する仕組み。
3.社会人教育(リ・スキリング)市場の収益化
「18歳中心主義からの脱却」という国策に乗り、企業のDX/AX研修や社会人の学び直しを法人契約等で収益化する仕組み。
では、なぜ多くの大学でこれら3つの収益化が「掛け声」だけで終わってしまうのでしょうか? 答えはシンプルです。「ターゲットのネットワーク化」と「日常的なコミュニケーション(マーケティング)」の仕組みが存在しないからです。
現在、ほとんどの大学ではステークホルダーの情報が部署ごとに分断(サイロ化)されています。卒業生名簿は校友連携部署、保護者は後援会担当部署、企業リストはキャリアセンターと研究推進部、公開講座の受講生はエクステンションセンター等がバラバラに管理し、データの更新すら不十分です。
本来であれば、「卒業生が役員を務める企業」に対し、「その企業の課題を解決する研究室のシーズ」と「社員向けのリ・スキリング講座」をパッケージで提案し、同様業種へと繋げるといった、データを統合した『面』でのアプローチが可能なはずです。
そして何より重要なのが、「通常のコミュニケーションを通じたファン化(ナーチャリング)」です。 人は、普段まったく連絡をくれない相手から突然「寄付をしてください」「共同研究をしませんか」と言われても動きません。
卒業生や企業に対し、大学が今どんな社会課題に挑み、学生たちがどんな「知的修羅場」で成長しているのかを、メルマガやオウンドメディア、ウェビナー等を通じて日常的に発信し、双方向のコミュニケーションを重ねることで初めて、「母校に投資したい」「この大学と組みたい」という強いエンゲージメント(関係資産)が生まれるのです。

「自前主義」の限界を超え、プロのBPOパートナーと未来を創る
ここで最後に、大学経営陣の皆様に冷静に考えていただきたい「時間とリソース」の現実があります。
ステークホルダーのデータを統合し、ネットワーク化し、日常的なコミュニケーションを通じて「大学の財産」へと育て上げる仕組みづくりには、一定のリードタイム(時間)がかかります。2035年の入学者急減期になってから慌てて始めても、絶対に間に合いません。今すぐ着手する必要があります。
しかし、現在の大学の内部リソース(自前主義)だけで、この高度なマーケティング仕組みを構築・運用できるでしょうか? 大学職員の皆様は、数年おきのジョブローテーションにより、デジタルマーケティング(CRM/MA運用)や法人営業(インサイドセールス)、ファンドレイジングの専門ノウハウを蓄積しにくい構造にあります。
しかも現場は今、教学改革や定員管理、日常の学生対応で手一杯であり、これ以上の業務負荷をかけることは現実的ではありません。だからこそ、将来を見据えた賢明な大学が選んでいるのが、マーケティングBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の戦略的活用です。
データベースの構築・名簿のクレンジングから、ターゲットに合わせたコンテンツ企画・メルマガ配信、企業へのアプローチ(インサイドセールス)やセミナー運営といった「日常的なコミュニケーションと仕組みの運用」は、ノウハウと専門人材を持つ外部のプロフェッショナルにアウトソーシングする。
そして、関心が高まった段階(ホットリード)で、大学の教職員や経営陣が直接対話してクロージング(大型提携や寄付の合意)を行う。 この「餅は餅屋」の分業体制こそが、固定費リスクを抑えながら最速で学費以外の収益基盤を立ち上げる、最も投資対効果(ROI)の高い経営判断です。
私たちSCNSは、ステークホルダーとのコミュニケーション設計からネットワーク化、マーケティング業務のBPOまでを一気通貫で支援し、大学の「見えない資産」を「確かな収益基盤」へと変える伴走型パートナーです。
「まだ大丈夫」という先送りをやめ、10年後、20年後も社会から選ばれ続ける大学であるために。まずは自校のステークホルダー資産の現状を棚卸しするところから、私たちと一緒に始めてみませんか?
【付録】あなたの大学は大丈夫?「学費依存脱却・ステークホルダー財産化」10の自己診断チェックリスト
現在の貴学の体制が、2035年以降の環境変化に対応できているか、以下の10項目でチェックしてみましょう。
[ ] ①データの統合:卒業生(校友会)、保護者、就職先企業、共同研究先企業のデータベースが部署間で分断されず、一元的に連携・活用できる状態になっているか?
[ ]②連絡先の鮮度:卒業生の現住所だけでなく、最新の「メールアドレス」や「現在の勤務先・役職」を3割以上把握できているか?
[ ] ③日常的な接点:卒業生や関係企業に対し、「寄付のお願い」や「年1回の広報誌」だけでなく、月1回以上の有益な情報発信(メルマガ・SNS・Webメディア等)を行っているか?
[ ] ④ターゲット別アプローチ:富裕層OB、若手卒業生、中堅企業経営者など、相手の属性や関心(AI、地域貢献、スポーツ等)に合わせた情報提供の出し分けができているか?
[ ]⑤産学連携の能動的営業:研究シーズ集をホームページに掲載して「待つ」だけでなく、企業の課題に合わせて大学側から能動的にアプローチ(提案営業)する部隊・仕組みがあるか?
[ ] ⑥社会人教育の法人開拓: 公開講座を「個人の趣味・教養」向けに提供するだけでなく、企業の「人材育成・リ・スキリング予算」を獲得するための法人向けパッケージとして営業できているか?
[ ]⑦ST比と定員の戦略:文科省の私学助成ルール変更(高ST比・定員未充足へのペナルティ)を踏まえた、中期的な学部再編・定員適正化のシミュレーションが完了しているか?
[ ]⑧専門人材の確保:学内にデジタルマーケティング(CRM/MA)やファンドレイジング、法人インサイドセールスの実務経験を持つ専門人材が配置されているか?
[ ] ⑨教職員の余力:現場の教職員は、既存の教学業務や管理業務に追われることなく、新たな収益事業(寄付・産学連携・リカレント)の企画・推進に十分な時間を割けているか?
[ ] ⑩外部パートナーの活用:自前主義(内製化)にこだわって時間を浪費するのではなく、専門のマーケティングBPO等を戦略的に活用してスピードとROIを高める予算配分ができているか?
診断結果の目安
■YESが8個以上: 素晴らしい体制です。すでに「ステークホルダーの財産化」が進んでおり、2035年以降も持続的に発展できる強固な基盤があります。
■YESが4〜7個: 危機意識はありますが、実行面のインフラやリソースが追いついていない可能性があります。部分的なBPO活用を含め、仕組みの再構築をおすすめします。
■YESが3個以下: 【要注意】 「現在のブランド」に依存し、将来の収益インフラへの投資が先送りされている状態です。仕組みづくりには時間がかかるため、早急に外部の専門家も交えた体制構築に着手する必要があります。
チェックリストで課題を感じられた大学関係者様は、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。貴学の状況に合わせた最適なネットワーク化とBPOプランをご提案いたします。