社会と繋がる大学変革
大学が資本市場と連携しながら、社会を変革する先頭集団へ参画
最近の大学動向
皆さんも2021年3月19日付の日経新聞で国際競争力・外部資金調達に国立大が筆頭に動き出している記事をお読みになったことと思います。「THE世界大学ランキング2021」では、中国の清華大学がアジアから初のトップ20にランクインする中、東京大学は36位を維持、京都大学は11ランク上げて54位。社会との繋がりで変革に期待したいと思います。
「東京大学・国際競争力の強化」
3月18日、海外大学などの著名な研究者を「グローバルフェロー」の名称で教員として登用する。海外からオンラインで授業を配信するほか、共同研究に参加できるようにする。新型コロナウィルスの影響で海外との往来制限が続く中でも学生らが世界レベルの教育や研究に触れられる機会をつくり、国際競争力を強化する。
「阪大、信用格付け取得 大学債の発行へ弾み」
大阪大学は18日、格付け投資情報センター(R&I)から「ダブルAプラス」、日本格付研究所(JCR)から「トリプルA」の発行体としての信用格付けを取得した。
国からの交付金など収入が減り資金確保が大学の共通課題となる中、大学債の発行が広がりそうだ。東京工業大学も8日にR&Iから「ダブルAプラス」を取得。東京大学は昨年10月に国立大学として初の大学債200億円を発行した。
大学が積極的に社会と繋がろうとしているのではないでしょうか。
東京大学における変革
東京大学第30代総長 五神真氏は、学内広報に『変革を駆動する大学』と言う理念を掲げ、『知の協創の世界拠点』の構築を全学共通の目標と定め様々な改革を進めきました。
一方で、知識集約型社会への転換が急速に進んでいます。しかし、無形の知的な資本に対する価値付けは必ずしも適正に行われず、デジタル技術を駆使したビジネスがその隙間をついて急成長した側面は否定できません。モノ主体の経済が前提であった市場原理の資本主義の歪みや、限界が顕在化したとも言えるのではないでしょうか?
このような状況を踏まえ、五神総長は多様な知と言う無形の価値を生み出す大学がこの流れを生み出すきっかけを作るべきだと考えました。それが長期大学債の発行なのです。
未来への備えとして、必須の知的な価値を生み出すための先行投資の必要性・重要性を大学が市場に直接訴えかけ、それが市場から評価される中で新たな資金循環が生まれ、未来型のより良い経済システムが創出されるのです。
参考:東京大学発信ビジョン
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z1311_00036.html
大学債
海外では急拡大しており、オックスフォード大学「100年債」は、2017年に大学債を発行し約1000億円の資金を調達しています。日本では、東京大学が国内初の大学債を2020年10月に40年の償還期限で、これからの研究、未来を見据えた投資を目的に国内の長期債を購入する機関投資家をターゲットとして発行に踏み切りました。東京大学坂田一郎副学長は、東京大学自体を大きく変革することが必要で、そのために思いきった先行投資は必要としています。
<目指すのは、一歩先の教育環境>
オンラインだけではなく直接対面での学生指導、実験指導、ゼミができるなど環境が整備できれば、世界の中の教育環境としては一歩先に行ける。
東大債の意義について
長期にわたって日銀は金融緩和を実施しており、市場にお金が溢れている状況だと思います。しかし、その肝心なお金が循環できていないのではないでしょうか?金融緩和の限界が叫ばれる一方で、従来の投資先にも不安はつきまとっています。
Society5.0、モノからコトへ、持続可能な発展など未来への投資が必要なことは、誰もが薄々気づき始めているはずです。そのきっかけの一つが「将来の知」に対する投資、大学債ではないかと思っています。
コロナ禍は我々の心に不安を掻き立てていますが、一方で新たな発想の転換を与えているはずです。ワクチンが普及して元通りの世界に戻ることは学生のキャンパスライフにとっても大切ですが、一方でデジタルとアナログの融合により、我々が得たものも大きいはずです。知の創造に果たす大学の役割は、将来の明暗を分けると言っても過言ではないはずであり、私も微力ながら応援していきたいと思っています。
大学経営関係含め、多少なりとも経験含めお役立ちできることも有ろうかと思いますので、お気軽にお声がけください。
五十嵐 義明
1974年文科省入省。文部大臣官房会計課、予算関係、施設関係を歴任しながら、奈良先端科学技術大学院大学、北海道大学、筑波大学、徳島大学で経理財務等を所管。2012年から2019年まで女子美術大学常務理事の職にあり、現在㈱学校コミュニケーションネットワークスの顧問他をこなす。