コミュニケーションが将来を左右する時代
早稲田大学戦略の数値目標が凄い
ここでは一例を紹介させて頂きます。4つの基軸・それに紐づく13の核心戦略と関連する19の数値目標を理路整然と整理されており、今回はビジョンそのものについてお話しするのではなく、リアルで実現する為に卒業生等ステークホルダーとのコミュニケーションを強化する前提で作られている点について着目したいと思います。
(引用:https://www.waseda.jp/inst/vision150/about/target)
①寄付金(2022年46.9億円→2032年100億円)
過去10年で32億円から46.9億円まで引き上げてきたこと自体凄いことなのですが、今この10年で更に倍増するのは容易なことではありません。
大学によって寄付金者の構成は異なりますが、ご存知の通り複数の株主を持つ企業では株主への説明責任を求められる中、簡単に増やせるものではありません。早稲田大学も新宿区と連携し「ふるさと納税」を導入しており成果はわかりませんが、景品で惹きつける方式は一過性に終わることが多く、他の大学でも我々が知る限りでは、基盤となる支持者を獲得できたとは評価しにくいものと思います。
②社会人教育の受講生人数(2021年約28千人→2032年80千人)
早稲田大学は比較的早期から社会人教育に注力しており、2012年には約35千人の受講生を確保していましたが、質を充実させる中で2022年では約28千人に絞ってきました。
80千人という規模は完全に教育上の社会貢献に加え、社会人教育市場における大きな影響力を持つことになりますし、収益がきちんと確保できなければ大学経営を左右しかねない事業規模と言えるのではないでしょうか。
WASEDA VISION 150「社会人教育の受講生人数」より
③校友会費納入者率50%(2022年32.5%→2032年50%)
今回のビジョンでは「基軸3:校友・地域との生涯にわたる連携の強化」を掲げ、校友の実践知を大学に還元し、教育・研究に活かすことを明示しています。
海外事例を紐解くまでもなく、ステークホルダーの中でも卒業生は大切な大学資産であり、GIVE&TAKEではなく母校愛に基づく支持・協力を頂ける特徴があります。
今回の目標について解説すると早稲田大学は終身会費を在学中に納める制度をとっていません。在学時に10年間分の校友会費を大学が代理収納し校友会に収めるのですが、更新はせいぜい1~2%と推定されますので、実現すれば「日本一の卒業生ネットワークを持つ大学」と言っても過言ではないチャレンジングな目標です。
ただし、この目標は将来に向かって大きな意味を持つものと思われ、寄付金、社会人教育の受講生、研究・教育への支援等を実現する為には、卒業生との絆を深めるのは極めて現実的な解決策となるからです。
WASEDA VISION 150「校友会費納入者率」より
コミュニケーションの重要性
意外と盲点なのですが、大学や校友会組織は時代環境に合わせたステークホルダーとのコミュニケーションは上手とは言えないような気がします。
「うちはSNSにも注力しているよ」「ホームカミングデイも有名人卒業生を呼んで凄く盛り上がる」・・・・
それはそれで大変素晴らしいことと思いますが、あまり定量的に評価はなされておらず、最悪の場合はイベント業者に多額の費用を支払い効果が薄いことも少なくありません。
この分野は、実はデータベースマーケティングそのものであり、実社会でもターゲットとのコミュニケーションが成果を左右している事例は枚挙にいとまがなく、SNS・郵便・メールと言った媒体の話ではなく、どのようにターゲットにアクセスし、どのようなストーリーでファン化するかの奥深い領域と言えます。
そもそもコミュニケーションのメリットとは?
お客様が意外とコミュニケーションの目的・効果を把握されていないケースがあります。釈迦に説法の部分ではありますが念のために(笑)
①生産性・効果の向上
卒業生ネットワークを例にとれば卒業生はそれぞれの生活があり、四六時中母校のことを考えているわけではありません。その環境の中に入り込み、母校愛を醸成していくには適切なコミュニケーションが極めて高い効果を産みます。
②帰属意識の向上
会社でもそうですが、コミュニケーションが少ない会社では圧倒的に離職率が高まります。東洋大学なら「他者のために自己を磨く」東京電機大学なら「技術は人なり」慶應義塾大学なら「利他の精神」などが根底にありますので、潜在化しているこれらの考え方を表出化してファンにするにはコミュニケーションは欠かさざるを得ません。
③組織文化の醸成
組織文化とは組織メンバーで共有されている意識的/無意識的な行動規範です。将来を担う学生を支援するのは先輩たちの役割、自分本位ではなく自身を磨くということは他人に優しいこと・・・・こういった誇り持てる文化を醸成していくのは地道なコミュニケーションに他なりません。
一言で成果を創出するコミュニケーションと言っても大変深い分野ですので、仕組み作りから成果創出までにお困りごとがございましたら、遠慮なくご相談いただければ幸いです。