大学ブランドに地殻変動が起こる?
「宮様と学べる機会を何故?」と親戚の声
私事で恐縮ですが、今から約50年前に越境入学が当たり前の都内小学校で中学受験をした時の話です。
当時2月から受験が始まり、まず一番早い受験校だった目白の学校にトライし無事合格。その先がどうなるか不安な親は早々に学校の指示に従い、即座に入学金を先納します。その後数校受け、当時受験倍率がかなり高かった慶應に運よく合格します。
結局慶應に進路を決めるのですが、その際に母親が実家の秋田の親戚に話したところ、母親の兄から「なんで宮様のいく学校に受かりながら慶應なんぞに行くのか?」と言われたそうです。秋田の親戚にとっては、目白の学校は「高貴な学校」とのイメージがかなり強かったようです。
ブランドとは?
ここでブランド論を記載するのは僭越ですので、今回のブランドの意味は「当該学校を選択するイメージであり、そのイメージが強いことによりその学校への支持が高くなるもの」と仮定させてください。
まずマーケティングの事例を1つ挙げてみましょう。「貴方の好きな飲み物は何ですか?」と聞いて、「お茶です」と答えが返ってきたとします。次に「それではもし暑い時に飲むお茶飲料を3つあげてください」といったようなことを聞きます。その際選択されたメーカーに対する購買効果は高くなるといわれています。
勿論飲みたい時に、目の前に「キンキンに冷えてます!」と広告された自動販売機がありお茶が一種類しかなければ話は別ですが、大学の選択は必ずと言っていいほど比較と選択がなされます。ゆえに大学のブランドイメージは支持を受ける要素として大きな影響を与えるものと思います。
大学ブランドは誰が決めるのか?
大学の価値を決めるのは受験者数や偏差値だけではないのですが、学費依存度が高いことから受験生を主たるターゲットにする傾向が強いことになります。
各校とも、高校生へのPRに積極的なだけでなく、卒業生と連携して各地で子供向け体操教室を実施し、保護者にも大学の素晴らしさを伝達するように努めたり、夏休みの自由研究テーマにもなる親子教室の開催を通じて直近の受験生や高校、予備校や学習塾だけでなく、将来の受験予備軍とその保護者に対しても積極的な活動をされています。
しかし、社会人が対象となるリカレント教育は、大学ブランドに影響を与える対象が、今まで以上に社会人マーケットに広がるのです。ちなみにTHE日本版(Times Higher Education)は教育力に焦点を当て、企業の評判調査が8%ありますので、従来から卒業生の活躍という点でブランドには影響していました。
今後拡大するリカレント教育市場では、キャリアップを目指す社会人や企業の人事教育担当部署・経営層が大学ブランドに影響してくるのです。
早稲田大学の決意
早稲田大学では、2032年150周年に向けての「WASEDA VISION 150」の中にある財務体質の中で、今まで学費、入学検定料、補助金、寄付金、受託事業が主であったが、「聖域なき収支構造の見直し」を宣言し、リカレント教育に関して“Extension”から“Integration”へと銘打って社会人マーケットへの進出強化を実施しています。
また、校友(卒業生)連携に対する具体的な目標値を設置し、更に校友、地域住民、国内だけでなく海外パートナー等を含めた「早稲田を核とする新たなコミュニティの形成」を核心戦略に組み込むなど具体的なターゲットへのアプローチを強化しています。明らかにこれからの大学経営を見据え、多様な支持者層の拡大に乗り出しています。
【早稲田大学リカレント教育】
https://www.waseda.jp/top/news/62394
【早稲田戦略】
https://www.waseda.jp/inst/vision150/assets/uploads/2020/01/gaiyou201911.pdf
新たな連携の必要性
一般社会では既に自前主義から高度な連携に成功した企業が勝ち抜いています。今後は間違いなく大学においても様々な連携が大学ブランドを向上させていくことは間違いないのではないでしょうか?
教育提供価値を向上させる学内連携や大学間連携、価値の提供先を拡大していく企業連携、そして最も大学の支持者として活用が遅れている卒業生連携が、具体的な大学としての提供価値を上げていきます。
卒業生組織が会費の一部を寄贈品や寄付として提供する時代は終焉を迎え、大学の教育・研究・社会貢献に対してボランティアとして共に価値提供をする時代に突入しています。
「わかっているけど言ってもなかなか進まない」から、外部の力も借り具体的に前に進める時期が来ているのではないでしょうか。ネットワークの形成から活性化、そして熱烈な支持者の獲得にお悩みの場合は、是非お気軽にご相談ください。