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2023年転換期での決断

間違いだらけだったウエルビーイング経営

つい先日以前勤めていた会社の後輩が、「会社が営業目標に対して部下を鼓舞することを戒めるようになり、大きくシェアを落とした」と愚痴を聞かされました。

ひと頃は「ホワイト企業」の言葉がもてはやされ、定時で帰れる、ノルマがない、更には楽な会社と勘違いする人が多数存在しましたが、ようやくそうではないことに気づき始めたのかもしれません。昨年は紙上を賑わしたウエルビーイングでも残念ながら同じ傾向が見受けられました。

「ウエルビーイング」(well-being)とは、心身ともに良好な状態にあることを意味する概念で、「幸福」とも翻訳されます。さまざまな調査から、自分が幸せだと感じる従業員は、創造的で業務のパフォーマンスが高く、組織に良い影響をもたらすことがわかっています。

ただし大事なのは、この概念が目的であって手段ではないことだったのです。当たり前ですが、組織メンバーが「お客様からの支持が最大の喜びになる」ことに満足する経営ではなく、給料さえ良ければ幸せである、勤務時間が短ければ満足度が高い、挙句の果てに目標に向かっての努力研鑽を否定するに至っては、もはや市場の支持が得られず負のスパイラルに入っていきます。

組織メンバーも、自らの権利だけを主張し喜びの本質を忘れて努力を怠ることで、終身雇用の終焉とJOB型人事制度の導入により悲惨な現実に直面していきます。

実は大学自身や卒業生組織に代表されるステークホルダーでも、同じことが言えるのではないでしょうか?

転換期に必要なイノベーションとわがままの排除

顧客の意見要望を取り入れて進化する「創造的イノベーション」、既成概念にとらわれず新たな発想を積極的に取り入れる「破壊的イノベーション」の2つの手法は、ハーバードビジネススクールのクレイトン教授が示した「イノベーションのジレンマ」に紹介されていますが、この基にあるのは自由闊達な風土とTOPの見識と言われ、組織の成長にはイノベーションは欠かせません。

しかしながら、大半は現状維持バイアス(今を変えたくない心理)を持つ上層部がその芽を摘んでしまいます。様々なアイデアを出しやすい自由闊達な風土が重要であることは誰もが認めるところなのですが、いざ新たな企画提案を出すと「他校の事例は?(新たな分野ですから事例などあろうはずもない)」「成果は確約できるのか?(その時点で誰も予測できない)」、更に重箱の隅を突くようなネガティブな質問を繰り返し「出る杭を打つ」状態が散見されます。粘り強く、打たれ強く、そして情熱に溢れているイノベーター人材は疲れ果てて新たな発想を出すのをやめてしまうのです。

一方、TOPが新たな分野への挑戦を決めたその時点から、「我儘(わがまま)」な人達が行く手を阻みます。コロナ禍で対応が遅れた大学では「IT環境を揃えるコスト負担がなければ対応できない」「対面でなければ生徒の反応がつかめない」と声高に先生方が主張して対応に苦慮したことも漏れ聞こえています。高齢化著しい卒業生組織では、「若年層は忙しいし母校愛が足りない」と言い切り、コロナとの共生方針が出た瞬間に対面会議を要求します。学生は「今の時代にITに弱い先生は?」、若年層の卒業生は「移動時間含めて時間効率を考えればオンラインがベスト。オンラインでのコミュニケーションが苦手な方々と一緒には・・・」と言っているのも事実です。これらの課題は、目的と工夫で乗り切れるはずです。

自由とわがままの境(界=さかい)

福沢諭吉の「学問のすすめ」では、自由とわがままの境界線を以下の言葉に記しています。

「自由と我儘との界(さかい)は、他人の妨げをなすとなさざるとの間にあり」

現代語に訳すと、人はだれでも自由に生きることが出来る。しかし他人に害を及ぼす「自分勝手」はわがままである。となるでしょうか。ある卒業生組織は、若年層の参画を促すために平日20時からオンラインで理事会を開催しています。その為に事務局は14時出社選択に規定を変え、Zoomのブレークアウトルームを駆使して議論の時間も設けます。更に、IT弱者である高齢者用にPC購入からwi-fi環境設定、Zoomでの参加方法に至るまで、若年層が主体となったIT弱者支援チームを作り、電話相談やスマホ訓練、近場でのパソコン教室への案内まで実施しました。

76歳のスマホすら持っていなかった理事(元会社社長)は、約1年掛かって今や高齢者の鏡と言われ「ミスターZoom」と呼ばれるに至りました。その方が以下のような言葉を発しています。

「若年者に教わることが恥ずかしかったり面倒だったり、面子もあり躊躇していた。会に若い人が入ると活気が出るし会の発展に必要なのもわかっていた。今振り返ると、年寄りの我儘で出来ない理由を正当化していたし、自分達が癌だったのもよくわかる。それに今だと若い人が私の意見に真摯に耳を傾けてくれ、楽しい。出来ない言い訳よりできる工夫をと部下に諭していた自分に戻れたのが何よりも嬉しい」

2023年は大学、卒業生組織共々大きな転換期です。この波に皆さんが一歩踏み出し持続可能な発展を目指すのであれば我々は全力で支援してまいります。