チャレンジ思考への転換
日の丸半導体の凋落に思う古い考え方の罪悪
先日、某大学の方とお話をしていた際に、台湾メーカーや韓国メーカーの日本工場進出の話題が上りました。私は日本の半導体が凋落したのは国の関与が低い政策的なものかと思っていたのですが、そうではありませんでした。伺ってみると目から鱗の内容だったのです。
「要因は組織構造、市場把握力、年功序列給与など様々な要素が絡んでいるものの、一番はイノベーションに向かない思考、有体に言えばチャレンジしない思考によるものだと思います。日本の技術者はよく言えば真面目。耐久性に優れ、高品質なモノづくりを叩き込まれていますから、周囲の環境が変わっても変化できない。
半導体の基本特許はアメリカでも、LSI(大規模集積回路)を作ったのは日本。大手通信機器やコンピューターには強いハード向けの半導体が必要だった。しかし、半導体のマーケットは一般人が使用するPC、そして今はスマホが主体。NTT仕様の通信機器向け半導体は35年保証。かたや数年で乗り換えるスマホは品質よりも価格。
35年保証思考で設計、プロセス、品質管理をやっていたら勝てるわけなく、韓国、台湾に負けていく。ちなみに宇宙ステーションの半導体は今でも日本製ですよ。」
確かに表面的にはマーケットに対し柔軟な対応が出来なかった、半導体は企業の部門にしか過ぎないなどの要因があるのですが、根本原因として、変化をするマインド、チャレンジするマインドが欠けていると思うのです。イノベーションが進む国では起業家輩出も多いですが、残念ながら日本の場合、遅れがちであるのも頷けます。
身近には「あるある」が一杯
半導体の話から、イノベーションの停滞(GII※1)、そして6月に経産省、厚労省、文科省から出された「2023年度ものづくり白書※2」を見ても、技術立国日本はある意味、岐路に立たされているように見えます。
気にしだすと様々な原因記事が目につき、原因の一つでもある資金問題も挙げられますが(これはどうにでもなると思いますが)、「失敗を認めない=新しいイノベーションが生まれない」「人材が行き来しない=企業・研究室に閉じこもりがち」とか、日本の組織はすぐにインハウス(組織内)で済ませようとして外部活用・連携をしないなど、プラスにさせるには根本的な思考回路を変えない限り解決できないことがわかります。
<日経ビジネス2021年5月記事より>
※1・GII:https://www.wipo.int/pressroom/ja/articles/2022/article_0011.html
※2・ものづくり白書概要:https://www.meti.go.jp/report/whitepaper/mono/2023/pdf/gaiyo.pdf
実際にお邪魔した大学やアルムナイでも、問い合わせ対応だけ受けることは出来ませんか?と言ったパッチを充てるようなお話もあれば、過去何十年も自分達で解決できなかった問題に対し、いくつか事例を挙げると、「それなら自分たちでできる」とプロジェクトを立ち上げはするものの、結局会議を重ねて終わっているケース(結果、出来ない)、他の大学の出方を見ながらといった消極性は良くある話。
他にもSNSを活用したコミュニケーションもいいが規定が必要だ、財政が苦しき折、支出に関しては全て理事会審議だ、会報誌のデジタル化はコストが下がるが高齢者の会員は離れる・・・など出来ない理由が噴出して先に進まないケースが身近には山のように存在しています。
これらは現状を変えたくない現状維持バイアスが、出来ない理由や完璧主義を生み、結果として時代に取り残されていくような気がします。
今必要なのは、チャレンジ精神と脱インハウスでは?
「やってみなはれ精神」が浸透するサントリーは、直近でも大変好調な業績を維持していますが、過去からワイン、ウイスキーから端を発し、後発のコーヒー飲料でも「BOSS」ブランドを確立し自販機市場で成績を伸ばし、お茶では「伊右衛門」、長寿社会を睨んで「セサミン」「ロコモア」などヒットを時代ごとに出して成長を続けます。この根源はチャレンジ精神そのものであり、まさにイノベーター体質と言えるのではないでしょうか。
また、出来るもの、必要不可欠なものについてのインハウス化は当然ながらも、大学の本業は教育・研究・社会貢献と普及、卒業生組織であれば校友の親睦と母校への発展寄与が本業であり、その目的達成に必要な周辺業務は中途半端にインハウス化すれば結果が生じないことは明らかになっています。
その理由は別の機会にお話ししますが、スピードと「餅は餅屋」の専門ノウハウは外部にあると同時に外部連携が出来ないこと=偏った視野に陥るということが、現在社会では常識化しつつあると思います。
もし皆様が、組織全体が古い考え方で先に進まない、どうすれば半歩前に進めるのか答えがなかなか見つからない、進め方そのものがわからないなど感じておられるのでしたら、是非気軽にご相談ください。意外と小さなチャレンジから突破口は見つかるものです。