HOME記事一覧「緩慢な衰退」を辿るか変革を選択するか

BLOG

「緩慢な衰退」を辿るか変革を選択するか

緩慢な衰退

かつて日立御三家と言えば、日立化成、日立金属、日立電線でしたが、今は日立ハイテクノロジーズ、日立キャピタル、マクセルを新御三家と呼ぶそうです。昔の日立を知る人からすれば、生成AI、GX/DX分野として半導体・バッテリー製造、エネルギー、鉄道、産業機器における社会インフラ事業のサービス化に投資シフトする日立は想像もつかないかもしれません。

一方、資金調達の手段が増え、セブン銀行から始まった新規参入が続き、PayPayなど電子決済サービスが日常になる中で、今や銀行自体の存在意義が問われて久しく、三大メガバンクすら令和に入って大幅なリストラを断行し、以前は引く手あまただった出向先すら見つけられない状況になっています。

これらの事象が表面化している中、「緩慢な衰退」がある日、奈落に落ちる結果が見えてきています。原因については様々な点が語られるでしょうが、古来より言われている「ゆでがえる現象」なのではないでしょうか。

これはビジネスの世界だけの話ではなく、大学市場でも同様の傾向がみられ、教育の質優先で定員削減を将来ビジョンに掲げる早稲田大学、2031年創立150年に留学経験者を50%、生涯学習受講者を年25千人等々果敢に挑戦する明治大学など、将来を見通して具体的な目標を掲げ実現への具体的な活動を行っています。

そして、これらの大学のビジョンを読んでいくと共通して、卒業生を貴重な支持者・人財と考え、校友との連携強化を強く打ち出し、従来の単なる親睦団体である卒業生組織も大きく変革しているのです。

緩慢な衰退を招く言い訳

大学の方々のお話しを伺うと、必ずステークホルダーに卒業生を挙げています。「様々なイベントの際に寄付をしてくれるし、スポーツの応援も熱心ですが・・・・」と配慮を見せる一方、「母校愛の表れなのでしょうが、苦言が多いですね」「高齢者中心で活性化しているとは言えない」「あまり深くかかわりたくない」などの否定的な声も聞こえます。少なくとも期待はしているのですが「無くてはならない母校の最大の支持者」とはかけ離れているケースも多くあるようです。

一方、卒業生組織の方も「親睦第一ですから」「引退して時間ができなければ卒業生組織には参加しませんよ」「今の若い人には母校愛は薄いんじゃないかな」など、現役世代の方々が聴いたら「だから入りたくないんです」の声が聞こえてきそうな声も聴かれます。

それでも卒業生ネットワークを活性化しようと本部の方々は奮闘しますが、中にはイベント業者やIT業者の勧めもあり、目先の興味を引く運営に偏ってしまっているケースも散見されます。とても勿体ないと思います。母校愛を基盤とし、在校生・母校・卒業生のボランティアでの貢献によって参加者の気持ちが満たされるとともに、成長・進化をする、そしてそれらの活動を通じて親睦を生むことが本来の卒業生組織の存在意義だと理解されているはずなのですが。

大手企業で導入しているような福利厚生サービス(旅行の割引、映画館の割引、購買品の割引など)を導入する、卒業生が経営している飲食店、旅館、各種事業を紹介し宣伝効果や集客?を期待する、或いは多くの寄付を行えば卒業生経営事業からの特典を貰えるなど、いわゆるGIVE&TAKE、特典付き誘導が見受けられ、より多くの卒業生に参画して欲しいとの想いが成し得る企画に見えるのですが、結局、SDGsではなく、一過性の効果で終わってしまっていて、次につながっていないケースが多いようです。

ある鋭い卒業生がポツリとつぶやいたのですが、「我々が卒業時に収めた会費が一部の卒業生特典に使われているのはちょっと。そんなことをしなくても、母校の発展に力を貸してほしい、今母校はこんなに頑張っているから応援しようと言ってくれればいいのに・・・」母校愛を持ち社会で鍛えられた方らしい見方ではないでしょうか。

組織変革に必要な3つの視点

下部組織から動かないと、TOPダウンが大事などと言っているうちは、なかなか変革に成功する組織はないようです。やると決めて以下の視点で動くことが変革のようです。今回は簡単にご説明しておきます。

1.決めて進む

少子化で大学経営が確実に苦しくなるかの議論をしても、いずれ学費無償化になれば首都圏の大学はつぶれないだろう、それは大学経営の問題で卒業生組織は関係ないなど、必ず多種多様な感想や意見が聞こえます。端的に言えば、変革の必要性を理解しない人を完全に理解させることは難しく、最も愚策なのは「(大学は、卒業生組織は、教員は、職員は)は変革を進めるべきなのにそれを理解できていない」と進めないことなのです。

変革すればどうなるかの将来像だけでなく、どのようにそれを実現するのか、また実現には何が必要なのかを説くことにより、理解者が増えていきますが、全員を納得させることは出来ないことを理解すべきかもしれません。

2.複雑な課題を解く

当たり前のことなのですが変革に特効薬はありません。複雑な課題、つまりコンフリクトを紐解くには、上層部の議論によるお墨付きと外部連携による力に依存するのが最も効果的でしょう。

例えば、リカレント教育を推進するには、提供する価値(教育内容)、ターゲットへの訴求(卒業生組織活用や広報の仕方、ターゲットの選定等々)、提供者の確保と参画意識醸成、実施までのお膳立て・・・・・数多くの課題を誰がどのように実施するのか、そして新たなことを実施するときに必要なリソースと投資を、今の学内リソースだけでカバーできるはずがないのです。

3.当事者意識に誘導する

納得しないことをやらされる状態で成功は難しいのです。その実行者は、いつでも「だから無理だったんだ」という言い訳に逃げ込もうとします。それを解決するのが当事者意識です。この当事者意識の醸成方法については、皆さんが一番よくご存知かもしれませんのでここでは割愛しますが、もしお悩みならばお気軽にご相談ください。

2025年度の方針、中期計画の刷新時期ですが、もし皆さんが変革が必要だと思い、そして今が「緩慢な衰退」に対しての予兆があるようでしたら、すぐにご連絡いただければ幸いです。