卒業生連携が価値を最大化する

競争優位戦略の次の一手
明治大学は、昨年12月AI時代に対応できる人材含め数理データベースサイエンスを強化します。これは他の大学でも見られる傾向ですが、法律、経営、工学等他分野が結集できる駿河台キャンパス総合施設計画「SURUGADAI6.0」を始動しました。更に農学部を持つ強みを磨きます。
ご存知の通り日本の食料自給率は農水省の発表によれば2023年度カロリーベースで38%と諸外国に比して低い水準です。これらの多様な環境問題や食糧問題、資源の枯渇問題の解決に向けて「明治大学黒川農場」での農業研究強化も明らかに未来を見据えた戦略と言えるでしょう。
関西の近畿大学は、鮪養殖でブランド化した研究力に磨きを懸け、一昨年は「近大ウナギ」の完全養殖にも成功していますが、実はこのブランドを活かし、即戦力人材育成と今年度中に100社の近大発ベンチャー企業の創出を目指し、次世代のイノベーション人材育成に綿密な仕組みを構築しています。
DX、GXなどこれから必須となる分野に学部学科で対応する大学は数多く見受けられますが、その具体的な成果が仕組み化されてきているのが両校の強みとなっているのではないでしょうか。この傾向は勝ち組と言われる大学で顕著に見受けられる傾向です。
どうやら今の大学ブランドを見ても、10年先を見据え、具体的な戦略実現の仕組みに着手しているところが大きく進展しているようです。
近畿大学HP抜粋:https://www.kindai.ac.jp/career/for-company/attraction/
具体的な仕組みとは?例:モニター&アンケート協力
海外の大学では様々な研究に卒業生が協力する事例が多々あります。大学研究においてモニターを募集するのはそれなりに面倒ですが、海外では論文発表を見ても多くの卒業生モニターが協力しているのがわかります。
新製品やサービスに関する研究において、卒業生をモニターとして募集し、意見や感想を収集するのは日常茶飯事ですし、医療や健康に関する研究において、特定の疾患や健康状態にある卒業生をモニターとして募集し、研究に協力してもらうこともあります。
卒業生は、世の中を良くするための研究に協力したと言う満足感と、なにより母校に貢献したと思う気持ちが醸成され、母校の熱烈な支持者に変貌していくのです。協力した方の部屋には大学からの感謝状や名前入りの研究成果報告があり、大きな心の拠り所になっているのです。
アンケートもIT普及により多くの卒業生が協力してくれます。キャリア、生活、教育などに関するアンケート調査は当たり前ですし、最近は日本でも大学院専攻科の新設にあたって、瞬時でニーズ調査を行うなどが卒業生組織の協力で成果を出しています。
大事なのは、卒業生は母校に貢献できたと満たされる心と、その参加してくれた卒業生が大学の支持者になっていくことなのです。統計的には、大学に様々な形で協力してくれる方の寄付率も高いですし、在校生応援や後輩の応援にも積極的なことは容易に想像できるのではないでしょうか。
ネットワークを資産化する取り組み
卒業生組織の目的には大学支援が間違いなく明記されています。しかし、その大学支援よりも懇親中心・イベント中心で運営される傘下組織が多いのが実情ではないでしょうか。
大学の財産は、卒業生・保護者だけではなく、大学に求人をしてくる企業(特に卒業生の入社実績がある企業)や産学連携実績がある企業、リカレント教育を受講してくれた社会人、医学部のある所は大学病院を利用する人達など様々なネットワーク資産があります。
単に組織を立ち上げても、何もしなければ形骸化しますが、例えば卒業生やリカレント教育で学んだ方々を中心に、業種例えば飲食業であれば、単に卒業生の経営するお店を紹介しても形骸化してしまうのが多くの事例です。
新規顧客獲得に向けたWebマーケティングを研究する教授を核として、定期的な勉強会や事例発表会を行う、成功例、失敗例を持ち回りで発表する、各課題を決め、その取り組みを発表シェアする。更に高齢層向けに健康食のメニューも研究する、地産地消などの優位性を構築する、場合によってはフランチャイズビジネスのノウハウも取り入れる・・・・・などを行うネットワークだとしたらどうでしょうか?
大学は実践知を得られますし、取り組み自体が大学のブランド価値をあげるのは勿論ですし、参加した方々の進化が始まり、皆がWINとなるのが仕組み化です。
今のネットワークがまだ形成されていない、仕組みが出来ていない、その前に卒業生組織の発想がまだ勿体ない状態にある・・・・このようなケースでは、最初に勉強会からスタートしてはどうでしょうか。お気軽にご相談ください。