卒業生コミュニケーションの本質

早稲田大学校友会の決断
早稲田大学校友会のHPに「WELBOXサービス終了のお知らせ」が掲載されているのを発見して、ある意味校友への向き合い方に関して本質に迫った判断だと思いました。
2007年校友会費を納入している校友会員向けに福利厚生サービスとして導入したものですが、「利用者数が少なく費用対効果が極めて低いこと(会費納入者の1%程度)などにより、苦渋の決断ではございますが、このたび、2026年3月31日をもってサービスの提供を終了させていただくことになりました(2025年3月8日代議員会決定)。」とHP上発表がありました。これは卒業生組織の存在意義を明確にする英断ではないかと思っています。
卒業生組織は、有料制の会員組織でもなければ、相互扶助の組合でもありませんから、「会費を払ったのだから何だかのメリットが欲しい」「卒業生なのだから特典があってしかるべき」との声に対して、「特典をお望みであれば、それは会の活動に参加され、自らが進化することです」と答えるようにアドバイスさせて頂いています。
幾つかの卒業生組織が、卒業生の参画を促すために過度な参画特典を設けたり、多額のコストを費やしたイベントを開催したりする気持ちはわかります。しかし、卒業生組織が、母校や後輩、仲間に貢献する利他の精神が発揮できる場であったとしたら、そしてそこに人格を磨き進化する仕組みがあれば・・・
その場こそが卒業生組織の目指す姿、存在意義ではないないでしょうか?
卒業生組織の存在意義とは
大学の卒業生組織は、どこの組織も母校の発展への寄与を掲げています。そのために卒業生同士がネットワークを強固なものとし親睦を深めるのであり、単に趣味で集まる、飲み会がしたい、或いは昔を懐かしみたい等が目的であれば卒業生組織である意味は全くないと思っています。東洋大学の安齋理事長は校友会130周年記念式典で以下の様に語られています。
「校友会創設時の大先輩たちの気持ちに思いを馳せて欲しい」と切り出されます。「社会人になり荒波に揉まれる中、卒業生同士の絆は相互に切磋琢磨して新たな刺激を与えてくれたはず。次の10年、その先の10年とお互いに新たな挑戦をし、工夫をしていく。そして気づくのです。変化しなければ進化がないことに。活動の中で奮闘する東洋大学卒業生は、様々な分野において、一生懸命砥石で磨くように研ぎ澄まされ進化する。それが東洋大学の誇りなのです。https://www.alumni-toyo.jp/news/toyoalumni-091/
卒業生組織への参画を促すのであれば、まさに参画される卒業生が進化する魅力を示せる組織への変革が必要なのではないでしょうか。
卒業生コミュニケーションの本質~コンテンツ~
卒業生が母校愛を持つのに、福利厚生サービスできっかけを掴むかもしれませんが、多くの卒業生は母校の卒業生として母校を誇りに思いたいと思っています。その気持ちに応えるのは、在校生の奮闘を支援したい、母校の最先端研究を誇りに思い応援したい、母校が社会に貢献する姿を後押ししたいと言った情報を発信することから始まるのだと思います。
その中から卒業生の持つ実践知と大学の持つ専門知が融合し、社会の役に立つ研究が進んだり、在校生の将来に目標を与えたり、その中で卒業生が自身を振り返り進化するためのコミュニケーションが大切だと思っています。
2012年にOBOG交流会※として第一回を開催して以来、卒業生と在校生が情報を交換する場を120回以上続けているのが明治大学校友会です。校友会傘下組織である国内紫紺会所属の「明治大学紫紺NET交流会」と明治大学校友会が共催して実施し、OB・OGの参加層は20代~40代が9割という、他校の卒業生組織も羨む若年層・中堅層の参加が実現しています。
※明治大学校友会HP抜粋:https://www.meiji-shikon.net/shikonkai_group/voluntary/net/
明治大学紫紺NET交流会は、「様々な業界で活躍する先輩と率直な仕事のお話しをしてみたい、近い年代のOB・OGに悩みを相談したい」という明大生のニーズに応え、ゼミやサークルのつながり等は関係なく、「明大生のために校友として貢献する」心を持つOBOGが有志で集い、明大生の仕事、人生の歩みに資することを活動趣旨としています。加えて、卒業後の若手校友が母校に帰ってこられる「居場所」として機能し、校友と明大生をつなぐことに寄与することを目的としています。
卒業生と大学が共創するレベルに至っているケースでは、卒業生が進化をする場があります。上記のケースでも参加した卒業生は初心に戻り自分を見直す場でもあると同時に、管理職として必須となるコーチングスキルも磨かれ、参加する卒業生同士の異業種人脈を得ることとなります。
卒業生が母校との絆を育むにあたり、卒業生組織は両者がともに発展・進化する場を提供する、それはリアルな場だけでなくWeb上のコミュニケーションによって成立可能であり、母校に貢献することが自らの進化に繋がることを理解できる情報発信からスタートするのがベターではないでしょうか。
ビジネスの世界では当たり前なのですが、既にGIVE&TAKEでは持続可能な発展はなく、WIN&WINの関係が重要であることは自明です。是非、多くの卒業生が秘めている母校愛を表出化し、卒業生を支援者から支持者、そしてパートナーに進化させるコミュニケーションこそが明るい未来を切り拓いていくものだと思います。
是非、良いコミュニケーション目指される際にはお声がけください。お待ちしています。