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AIは「数値」で選び、ファンは「物語」で選ぶ。 ~大学経営に今、ファンづくりが必要な理由~

便利さの裏側に潜む「大学淘汰」の足音

AI(人工知能)が日常に溶け込み、私たちの意思決定の多くをアルゴリズムがサポートする時代になりました。受験生が志望校を探す、あるいは企業が共同研究先を検討する際、かつてのようにパンフレットを隅々まで読み込むことは少なくなっています。代わりにAIが、膨大なネット上のデータから「効率」や「実績」をスコアリングし、最適解を提示します。しかし、ここで大学関係者の皆様に問いかけたいことがあります。 

「あなたの大学は、AIのアルゴリズムに推薦されるだけの『固有の価値』を可視化できていますか?」

もし、今この瞬間に卒業生や保護者、地域社会、そして提携企業との「双方向のつながり」を築けていないのであれば、貴校はAIからも、そして最も大切な「人間」からも見放されるリスクに直面しているのではないでしょうか。

現在のアルゴリズム(AI)は単なる「情報のマッチング」から「信頼と熱量のスコアリング」へと進化しています。AIが「人間が何を愛しているか」をデータから読み取るようになった今、ファン化(卒業生のファン組織化等)は単なるマーケティング施策ではなく、生存戦略そのものになっています。

ビジネス社会の冷徹な実例――「選別」はもう始まっている

ビジネスの世界では、AIによる「ファン化の有無」での選別がすでに残酷なまでの格差を生んでいます。

例えば、旅行業界や飲食業界を見てみましょう。かつては広告費をかければ検索上位に表示され、客が集まりました。しかし現在は、AIがSNSの口コミやエンゲージメント(反応率)を解析し、「本当に愛されているブランド」だけをレコメンドします。

ある大手アパレル企業は、流行を追うだけのビジネスモデルから、顧客を「共創パートナー」として企画に巻き込むファンコミュニティ型へ舵を切りました。結果、AIが「このブランドは熱狂的な支持者がいる」と判断し、広告費をかけずとも優先的にユーザーに表示される好循環を生んでいます。

一方で、スペック(機能や価格)だけで勝負していた企業は、AIによって「より安く、より効率的な他社」と比較され、瞬く間に代替されるようになりました。 

大学も例外ではありません。「偏差値」や「就職実績」という数値データ(スペック)だけで勝負している大学は、AIによって「よりコストパフォーマンスの良い大学」と比較検討されるだけの存在に成り下がります。AIは感情を持ちません。しかし、AIが学習する「世の中の評価」は、ステークホルダーが発する熱量によって作られるのです。

「スノーピーク」は、今人気のキャンプ用品メーカーですが、彼らが売っているのは「道具」ではなく「自然の中での人間性の回復」という体験です。戦略として「焚火トーク」に代表される、社員と顧客が一緒にキャンプをするイベントを徹底。

顧客を「ユーザー」ではなく、共に野遊びを楽しむ「コミュニティの一員」として扱いました。その結果、AI時代の恩恵を享受しています。広告を打たずとも、ファンがSNSに自発的にキャンプ風景を投稿し続けます。AIはこれを「極めてエンゲージメントの高い良質なコンテンツ」と認識し、新規ユーザーへのおすすめに優先的に表示させ、ブランド価値をさらに高める好循環を生んでいます。 

一方、一世を風靡した家電量販店系のプライベートブランド、特に安価な白物家電は苦戦を強いられています。かつては「大手メーカーより少し安くて高性能」というポジションで売れていました。

現状、AI(特にAmazonや楽天のレコメンド)は、世界中の安価なD2Cブランドや中国系メーカーを「より高コスパな選択肢」として横並びに表示します。ブランドに対する愛着(ファン化)がないため、ユーザーは1円でも安い方、あるいはAIが「Amazon Choice」と推奨する方へ流れます。

その結果、自社独自の「物語」がないため、常に価格競争にさらされ、利益率が極限まで削られる「コモディティ化の罠」に陥っています。

今すぐ着手すべき「ファン化」の3大基盤

大学が「選ばれる存在」であり続けるためには、以下の3つの基盤を今すぐに作り始めることをお勧めします。

どのような大学を目指すのかの「VISION」の共有

単なる学長告辞ではなく、ステークホルダーが「その未来に自分も関わりたい」と思えるビジョンが必要です。AIは「過去のデータ」を処理しますが、ビジョンは「未来の期待」を作ります。卒業生が母校を誇りに思い、寄付や協力という形で投資したくなるような、物語性のある旗印を掲げてください。

ステークホルダーとの「双方向コミュニケーション」

大学からの一方的な広報(Webサイトの更新や年1回の会報誌)だけではファンは生まれません。特にイベント主体型の卒業生組織には大至急改革が必要です。マーケティングオートメーション(MA)などを活用し、卒業生の興味関心に合わせた情報を届け、彼らの声を聞く仕組みが必要です。

「大学が自分を見てくれている」という実感が、帰属意識を強めます。AIは個人の行動を分析しますが、心を通わせるのは人間同士のコミュニケーションです。

  ファン化してもらうための「共創事業」

 卒業生や企業を「支援者」としてだけでなく、「パートナー」として捉え直してください。大学の知見と企業の技術を掛け合わせたリカレント教育や、地域課題を卒業生と共に解決するプロジェクトなど、共に「汗をかく場」を作ることが重要です。

自らが関わった(共創した)プロジェクトがある大学を、人は簡単には見捨てません。これこそが、AIには決して真似できない「人間関係の強み」となります。

後手に回ることは「無」になることと同じ

「ファンづくりは、余裕がある時にやればいい」「実施したくともリソースがない」「(自分が在籍するうちは」まだ大丈夫)

もしそうお考えであれば、その認識を改めていただく必要があります。AIによる情報の均質化が進む中で、人々の心に唯一残るのは「熱量」です。ステークホルダーとの絆を深める基盤作りには時間がかかります。一朝一夕にファンは生まれません。

しかし、今この瞬間に種をまかなければ、数年後、貴校の名前はAIの推薦リストから消え、卒業生の名簿はただのデータの塊となり、地域からは「あってもなくてもいい存在」と見なされるでしょう。

逆に言えば、今からファン化に取り組む大学は、AIをも味方につけることができます。多くの称賛の声や、活発な交流データがネット上に溢れれば、AIは「この大学は価値がある」と判断し、さらに多くの良質なステークホルダーを呼び込んでくれるからです。

大学の未来を、ステークホルダーと共に創る。その覚悟が今、問われています。どのようにしたら「ファン化」が出来るのか?すぐにご相談ください。お待ちしています。