進化と衰退の分水嶺が来ています
本当に出来るのかね?
ある女子大の職員が「このままでは女子大の生き残りは大変。従来の延長ではなく、ステークホルダーの力を結集して新たな女子大の魅力を作りたいのですが」と企画骨子をまとめて提案しました。
「この予算以上に効果は出るのかね」「今当学には余分な予算はない」「確実な効果が見込めなければ認められない」「経費削減が優先方針」・・・一見正論に聞こえますが、確実に成果が出る保証があるのであれば誰もが採用し、結果として優位性のない取り組みになるものですし、世の中にそんな確実な話があるはずもないのですが。
結果として、彼は何度も視点を変えて提案するうちに疲れてしまい、従来に毛が生えた程度の取り組みを繰り返す日常に埋没してしまいます。
一方、ICTの導入により今まで見えなかった卒業生の動向や考え方に対しても「メールは2万人で6千人しか読んでいないではないか」「広報誌は30万人が読んでおり、先日も仲間からあの記事は良かったと聞いた」と言い放たれる。過去に会報誌を何人が読み、効果測定について分析した様子が一切なかったのですが、客観的な事実には文句から入る。
こんな経験は皆さんにはないと思いますが、これからの不確実性の時代に、過去の経験に照らし合わせて批判をする文化は進化を止めるだけではなく衰退を加速させると言われています。
あのトヨタのフラッグシップカー「クラウン」ですら、大きな変化で勝負に出る時代です。
トヨタ自動車ウェブサイトより: https://toyota.jp/crown
世界初のカラーフィルムメーカー倒産から10年
現在は商業印刷業で再上場しているコダックですが、実は2012年に倒産しています。倒産の原因については様々な意見があるものの、「70セントを稼ぎ出すフィルム事業を5セントしか稼ぎ出せないデジタル化事業に慌てて転換するのはベストではない」という考え方が、市場のパラダイム変換に乗り遅れる結果を招きます。
組織は本来、業績が良く、余裕のある時に大きく舵を切るべきであることは皆さんも理解されていると思います。
一方、1984年のロサンゼルスオリンピックでコダックが躊躇している間にスポンサー契約を結んだ富士フィルムは、デジタル化の波は抑えられず銀塩写真は収益が上がらなくなると覚悟し、発想を転換します。「一つの考え方に固執せず、多様性を尊重し、自社の保有技術を水平展開する」方向への転換です。今や富士フィルムは化学品メーカーとして、医療、化粧品、医療機器、再生医療のメーカーとして生き残りに成功しています。
大学市場も、少子高齢化、ICT技術の進展による教育のパラダイム変換、そしてWeb3.0、AIなどの進展で社会が求める人材に変化が生じている中で、ある意味銀塩写真が衰退していく状況と似ているのかもしれません。
富士フイルムウェブサイトより: https://www.fujifilm.com/jp/ja/about/brand/story/neverstop
コントリビュート文化
大阪大学が発表した論文でも話題になりましたが、批判文化が日本を技術後進国にしているとの論調が目立つようになってきました。実際に進化しない或いは衰退していく組織では極めて目立つ傾向のようで、すぐに責任の所在を追及する、完璧を求める習性がすべてをぶち壊してしまう例は多々あります。
少し前にリリースされたWindows11ですが、当たり前のように不具合を頻繁に修正していますし、おなじみのZoomも現在の最新バージョンは5.11.1(2022年7月時点)で、ほぼ毎月アップデートされています。
当たり前のことですが、完璧なシステムも完璧な人も存在しないのですから、完璧を待って衰退する状況なのか、衰退を見越して着手し進化を遂げながら修正していくのかで組織が決まると言っても過言ではないのです。
残念ながら、経験豊富な方でも「現状維持バイアス=現状の状態を維持する方向に働く心理効果」に勝てずに批判をする(=ご本人たちは批判ではなく念には念を入れるだけだと言われますが)ことで、成長や生き残りの芽を潰していることも少なくありません。
そんな中で、他者に貢献することで自己肯定できるコントリビュート※文化が着目されています。ちなみに哲学の大学として有名な東洋大学では「他者のために自己を磨く」を東洋大学の心として掲げていますが、こうした状況を想定して説いておられるのかもしれません。
※貢献する、寄与するの意味。様々な分野の人が参加して連携し成果を上げるケースによく使われるようになってきました
今変わらなければ・・・・
最近の経営者で「朝令暮改は当たり前」と言って憚らない人が増えていることに気がつきませんでしょうか?一昔前は「方針が定まらない」と混乱を引き起こす要因として使われていました。
不確実性の時代が当たり前に認識される今、これからの人にバトンを渡すには「コロナ禍だからオンラインも仕方がないが、議論は面談に限る」「パソコンより手に取って読むから覚えるんだ」と一面だけをとらえて否定するのではなく、「電子媒体と紙媒体でそれぞれメリデメがあるから、それを整理して活用を考えよう」と言えることが重要ではないでしょうか?
完璧を求めても明日の為替相場を絶対に読める人はいません。だからこそ、背景、時代環境、そして実現できる可能性を見て判断し、進化を止めない挑戦こそが今最も求められていると思います。
時代環境に即したコミュニケーションによる効果を確認されたい方は、是非お気軽にご相談ください。是非一緒に進化しましょう。