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人を惹きつける組織

個人の成長と組織の成長

昨年(2022)話題となった本に、低迷してしまった日本電機業界で異彩を放ち始めたパナソニックコネクト株式会社(以下、パナソニックコネクト)の樋口社長が書かれた「パナソニック覚醒」があります。

パナソニックコネクトは、昨年の売り上げで1兆1257億円、従業員数約3万人の会社として、皆様も良くご存知のPC「レッツノート」から顔認証ソリューションなど幅広くICT時代の先端を支えている会社です。2020年には「第9回日本チャレンジ大賞」を受賞するなど、組織の活性化で有名な企業となっています。

この会社が着目されているのは、個人の成長と組織の成長の両立なくして今の時代は成長できないことを明確化している点です。今は常識化しているとはいえ、「よい組織は楽な組織とは異なる」と言い切っている会社です。

その上で大多数が納得する論理的な説明を行ったうえで、「全体利益思想は機会を損失する。組織の掲げる方針に少しでも反対する人がいると経営=運営を貫けなくなる。そのような時には『個別にはいろいろな意見があるかも知れないが、会社として正しいのはこちらです!』」と言い切るそうです。

毎年多くの卒業生を輩出する組織において、会報誌の負担や情報伝達のスピードの遅さを回避する為、ICT化を推進しますが、少なからず高齢の卒業生から「紙が見やすい」「会報誌があるから会費を払う」「高齢者は紙が慣れている」などの声に押されて、日本が失われた30年を回復する為にICT化が避けて通れないにも拘わらず、今一つ踏み切れない卒業生組織には頭が痛い話です。

卒業生組織で個人の成長?

個人の成長には、組織の目的ビジョンなどの共感する指針に加え、モチベーションが極めて大きく影響します。このモチベーションの源泉は「在学生、大学、卒業生同士、そして地域に貢献することによって自らが成長する」ことを示せるかどうかですし、口で言うだけではなく、それが実感できる取り組みに繋がっているかどうかなのです。

Z世代と呼ばれる今の新卒者や、人生100年時代を意識した見識ある高齢者の間では、コロナ禍の影響もあり「自分の人生にとって何が有益なのか」を考える傾向が顕在化しており、一般企業でも「パーパス経営」(組織の社会的な存在意義を明確化し人材に変化を促す経営手法)が当たり前になりつつあります。

以前にもご紹介しましたが、明治大学ではMEUJI VISION 150のコンセプトとして「前へー『個』を磨き、ともに持続可能な社会を創る」を掲げ、個を磨くことの重要性を前面に出して、ALL明治としての力を結集しようとしています。また、東洋大学は教育の心として「他者のために自己を磨く」、慶應義塾大学では「利他の精神」として、個人の(健全な)成長が組織を大きく成長する真理を説いています。

これらの基本的な考え方を「共感を呼べる取り組み」に具現化することによって、卒業生組織にも人が集まってくるのです。GIVE&TAKE的な発想での特典を設けるとか、一過性に終わってしまうイベントだけでは本来の持続可能な組織の発展はないのではないでしょうか。

個人が成長できると思えば、後は組織としてその人達と共に、目的を達成する為の戦略シナリオをしっかり描いていけば、組織の活性化は始まるのです。

共感を呼び個人も組織も成長する取り組み事例

2011年にスタートした昭和女子大の「社会人メンター制度」は、実就職率12年連続女子大NO.1を支えていることはあまりに有名です。各大学の卒業生組織でも就職支援の会を開催したりしていますが、今は卒業生以外の社会人が3/4を占める昭和女子大のメンター制度は一味違います。※1

詳しくはHPにその一端が紹介されていますが、協力する社会人メンター自身が自分の経験を社会に役立てたいと言う奉仕の精神と、実施することで自身が磨かれることを十分理解した仕組みとなっている点です。

※1(https://mentor.swu.ac.jp/

早稲田大学校友会傘下になる「西東京稲門会」では、経済的理由等で学校以外で塾や家庭教師など、勉強を教わることができない子ども達に、無料で学びの手伝いを行っている学習塾「稲門寺子屋西東京※2」を稲門会地域貢献のメイン事業として開講しています。

※2 https://www.nishitokyo-tomonkai.info/terakoya.htm

このように他の人達に貢献し、自らのやりがいをベースに個人が成長する仕組みこそが、卒業生組織が活性化する為に必要な「共感を呼ぶ仕組み」と言えるのではないでしょうか。

豪華なラウンジや施設優待も利用するごく少数の人には便利かもしれませんが、ちょっとした工夫で多様な仲間が参画するその大学らしい仕組みは作れるものです。具体的な仕組みづくりについてのご相談は遠慮なくご相談ください。