卒業生組織と一体となった大学が躍進する
産学連携と営業力
この大学と連携すれば商品価値が上がるだろうと、企業が大学研究を訪れるかもしれません。ただ、それは一部の権威ある大学か運が良い大学が享受するケースでしかないかもしれません。
文科省調査最新版でも、民間企業からの研究資金受け入れ額ベスト5は167億の東京大学を筆頭にベスト5は国立、ようやくベスト6に私立の慶應義塾がランクインしてきます。このことを単に知名度と権威と位置付けては、まさに宝の持ち腐れとなるだけではないかと思っています。
企業は新たな収益、競争優位を目指して「事業における欠けたピースの補完」か「社内リソースでは出ないアイデアや発想の補完」を目的としてオープンイノベーションに踏み出します。
オープンイノベーションとは、自社のイノベーションを成功させるために、他社を含めたあらゆるリソースを活用してビジネスチャンスをつくることなのですが、そこに大学の研究や専門知が加われば大変素晴らしいものが出来るのは論を厭わないのではないでしょうか。
筆者自身も保険会社時代に会社ビジョンを作る際、社内リソースでは出ないアイデアや発想を求め、某大学の先生とコラボレーションさせて頂き、まさに目から鱗で新規事業をも包括したビジョンを構築出来た経験があります。
しかし、産学連携が伸びているのは事実なのですが、まだ大学の財産を飛躍させるレベルには到底達していないように思います。その一つの原因は、先生方の人脈やごく少数の経営層人脈に頼った機会の少なさ、端的に言えば営業力の弱さではないでしょうか。
文科省令和6年2月公表「大学等における産学連携等実施状況について令和4年度実績」
民間企業からの研究資金等受入額
WIN&WINを構築しやすいのが卒業生
先程のTOPに君臨する東京大学は、旧赤門学友会を「東京大学校友会」として、また他国立大学も、法人は別ですが、完全に卒業生組織が大学一体型で卒業生ネットワークを強化しております。6位の慶應義塾三田会の結束は有名ですが、9位にランクインする順天堂大学は、医療・看護・スポーツを柱とするだけあり、それぞれの分野同窓会が強固な結束を実行しています。
先日、早稲田大学校友会から「WASEDA PRIDE2024~エンジの誇り~」が卒業生に配信されました。校友の母校愛を高める際に、それぞれの大学の強みを前面に出していくのは常套手段であり、卓越した研究(先日の東北大学萩友会は国際卓越大学認定と同時に配信)、在学生の活躍、そして人気の高いカレッジスポーツなどは校友のファン化に貢献します。
今回の早稲田大学×早稲田大学校友会が共同でスポーツ強化基金への協力をお願いしていますが、このように大学と卒業生組織が一体となって、卒業生をファン化していくことが重要なのです。
当たり前のことですが、ビジネスの世界でもリピーターや固定客の数が、その会社の基盤であることは言うまでもありません。そして、大学が全面に出るのではなく、母校愛を源泉とする卒業生組織と一体化した取り組みにより、最近の行動科学でいうハーディング効果※も産まれてくるのではないでしょうか。
WASEDA PRIDE2024より
※ハーディング効果:人間は、合理的な観点から物事の判断をしたり、自らの行動を決定するよりも、多くの人々と同じ行動をとることに安心感を抱き、周りに同調したり他人の行動に追随してしまう傾向があること。
今こそオープンイノベーションを実現
社会人としての実践知、そして所属する組織の課題を知り、かつ社会人人脈を持つ卒業生が、産学連携先としての繋ぎをしてくれる、実践知を提供してくれることは容易に想像できるのではないでしょうか。
現在、ビジネス組織だけでなく大学自身もイノベーション人材の育成が叫ばれています。既に国立研究開発法人科学技術振興機構、埼玉大学、神戸大学など大学群だけでなく、グロービス、リスキルなど民間の参入も顕著となっています。
イノベーション人材育成に関しての要素については、様々な視点から語られておりますが、表現方法に差異はあるものの実践知は極めて重要な要素と言えます。
多摩大学大学院教授、㈱ライフシフト会長徳岡 晃一郎氏発表資料抜粋
「パイ型ベースとは、ギリシャ文字のパイ(π)の形に例えられる知見の深さと広さだ。
すなわち、ひとつの専門分野において深いだけなく、複数の専門分野(パイの二本の足)と、
幅広い教養(頭の横棒)を持つこと」としている
卒業生のパワーを活かせた場合、実践知を得る、大学本業である教育・研究・社会貢献に貢献頂けるのですが、結果として一つの例としてイノベーション人材の育成にもつながることをご理解いただきたいのです。
特に大学と卒業生組織の一体化、その効果と結果創出までのプロセスにお悩みの方は是非お気軽にご相談ください。